日本沈没1973>日本沈没2006

小説/映画「日本沈没」が好き。もともとは10年くらい前にレンタルビデオで映画版を見たのがきっかけ。日本が沈没するなんてありえないシチュエーションも東大名誉教授「竹内均」御大自らご出演のプレートテクトニクス解説と2年間かけて沈んでいくという時間感覚で笑えない程度の真実味は与えてくれる。

国土を失い流浪の民になったとき島国日本国民のアイデンティティはどうなってしまうのか苦悩する山本総理を演じる丹波哲郎の涙があまりにカッコよくて、二谷英明が率いる科学者チームの日夜問わずの働きや、計画に関わってしまった民間人の藤岡弘の漢魂にも熱くなる。あまりに衝撃的だったのでその後小説を買って読んだ。あー、もう日本沈没だけでご飯三杯食える。

そして今ごろになって2006年にリメイクされた映画「日本沈没」を見た。今までずっと何となくイヤな予感がしてちょっと遠慮してた。でも食わず嫌いはよくないんじゃないだろか。

見終わった感想

うーん、ちょっと小さくて軽くなっちゃったかな。日本沈没という未曾有の大災害に立ち向かう人々の群像劇だった1973版に対して2006版はクサナギ君と柴崎のこじんまりしたただのラブストーリーになってた。悪くはないと思ったけどこの程度のスケールなら「日本沈没」じゃなくて「海猿」でやってくれよ、と思った。そしてなにより残念だったのは災害の描き方が軽いってこと。圧倒的に軽い。CGを使って大都市が崩れる様子を描いているんだけど、軽い、軽すぎる。なんか水がバシャバシャ流れてきて、ビルがパラパラっと崩れて、はぁそれで?って感じ。40年前の模型を駆使した特撮シーンの足下にもおよばないなんてガッカリ。

しかもオチにもビックリ。もう5年も前の映画だからネタバレしてもOKだと思うから書くけど。クサナギ君の命をかけた活躍によって日本沈没が回避されるって・・・え?沈没しないの?! いくらラブストーリーだからってこのオチはないんじゃないの? しかも秘密兵器「N2爆弾」って、エヴァかよ。国民にとって国土を失うということは何を意味するのか。日本人というアイデンティティはどうなってしまうのか。そんなことを真剣に考えさせてくれる日本沈没が・・・たった1人の若者の活躍で沈没しないなんて・・・いやああぁぁぁぁっ!!!! 日本が沈没しない日本沈没なんて日本沈没じゃない!

海猿っていうタイトルにしておいてくれればオレも楽しめたのにな。