グロック26アドバンス

 5年ほど前、当時勤めていた会社の同僚が持っていたエアガンをみせてもらったことがある。せいぜい駄菓子屋で売ってる銀玉鉄砲程度しか知らない私には手にした時のその重量と射撃時の反動はまさに衝撃的。こ、こんなオモチャがあっていいのか?! 私の物欲にいっきに火がついた。この衝撃的なオモチャはガスブローバック式エアガンという。圧縮ガスの勢いでBB弾を発射するだけでなく同時に圧縮ガスで遊底も動いて次弾装填が完了する。撃つたびにバチッバチッと遊底が激しく動く衝撃が手に伝わってくる。大人のオモチャだわ、コレ。実際、このタイプのエアガンは18禁指定になってる。

 はじめて買ったエアガンは東京マルイの「グロック26アドバンス」というハンドガン。オーストリアの銃器メーカー、グロック社が開発した小型拳銃グロック26というのがある。グロック26アドバンスはこのエアガンに東京マルイがオリジナルパーツを追加して作った架空のエアガン。なかなかカッコイイ。架空のエアガンとはいえ、アニメ「攻殻機動隊StandAloneComplex」の第15話で登場人物バトーが新人指導のシーンで「なかなか使えそうじゃねえか」とつぶやいて画面に大写しになったヤツなので覚えている人は覚えている。東京マルイとのコラボレーションらしい。

 好きなアニメだし、感化されて買っちゃったのは否めない。まあ他人には実銃のグロックのウンチクを語って、グロック好きを装っているけどね。でもアニメの設定資料集だとG33 ADVANCEになってる。グロック33をカスタマイズしたという設定。

 あれ・・・・? ま、こまけぇことはいいんだよ。どうせ東京マルイだってG26 ADVANCEにおまけパーツ(レールにフラッシュライトとレーザーサイトを取り付けるためのマウント)を付けてG33 ADVANCE(攻殻機動隊モデル)として限定販売してたんだし。


 ほら、ソックリ。


 ちなみに、カミさんはカナーリご不満。というより嫌悪に近い、いや、激怒か。「そんな野蛮なものは私の目に見えるところに置かないでくれ」と。特に子供たちにはそんなものがこの家の中にあることが絶対にわからないようにしろとの厳命。以来、会社のロッカーにしまってあったんだが、3年前に会社をやめて自宅を事務所にしてからは自分のクローゼットの中のしかも鞄の中にしまって厳重に隠してある。グスン・・・

エチルヘキサン酸の怪

 国内の化粧品では全成分表示が法律で義務づけられている。法律で決まっているのは「全成分を表示をする」ことだけで、どんな名称を使うかについては法的拘束力はない。だから勝手にステキな成分名をつけてキラキラ感満載の成分表をつくっても消費者に無用の誤解を与える内容でなければまあ問題ないっちゃ問題ない。しかし各社が勝手にやるとわけわからんことになるので日本化粧品工業連合会(粧工連)が作成する「化粧品の成分表示名称リスト」に書かれている名称を使用するというのが業界ルールになっている。そして多くの会社がこのリストに基づいて成分表を作成している。

 つまり粧工連が作成している「化粧品の成分表示名称リスト」は法的強制力はないもののそれに近い影響力を持っている。だからこのリストが右往左往すると業界が右往左往してしまう(正確には薬事担当者が右往左往して、その周辺の技術系社員や版下作成担当者がブルンブルン振り回されて第二宇宙速度を超えてしまう人もいるとかいないとか)。

 さて、これから始まる本日のグチを理解するために押さえておきたい知識をひとつ挙げておく。

  • 粧工連は作成した表示名称のひとつひとつに成分番号(6桁の数字)を付けて整理している。

 まず日本化粧品成分表示名称事典の【第1版】を持っている人は350ページを開いて「トリオクタン酸トリメチロールプロパン」を探してほしい。この表示名称は成分番号551877として登録されていることが確認できる。

 次に日本化粧品成分表示名称事典の【第2版】を持っている人はその「トリオクタン酸トリメチロールプロパン」を探してほしい。実はどこにも載ってない。成分番号551877の表示名称は「トリエチルヘキサン酸トリメチロールプロパン」と名前を変えて431ページに掲載されている。

 第1版で「トリオクタン酸トリメチロールプロパン」が第2版では「トリエチルヘキサン酸トリメチロールプロパン」に表示名称が変更になっている。ところが、粧工連のホームページでは「トリエチルヘキサン酸トリメチロールプロパン」を探しても載っていない。今も「トリオクタン酸トリメチロールプロパン」のままだ。

 で、どっちなの。名称が変わったの?変わってないの?

 粧工連は欧米標準のINCIに準じて表示名称を決めている。この成分の表示名称が決められた2000年当時INCIでは炭素6個の2位から炭素2個が分岐している構造をOctane(オクタン)と呼んで”Trimethylolpropane Trioctanoate”という名称をつけていた。本来Octaneは炭素8個が直列している構造をさす用語であり、分岐しているこの成分の構造はEthylhexane(エチルヘキサン)という用語をあてるべきである。しかし当時のINCIでは慣用的にOctaneという用語をあてていた。そこで粧工連もこの構造に「オクタン」をあてて「トリオクタン酸トリメチロールプロパン」という名称を決定した。

 ところが粧工連がトリオクタン酸トリメチロールプロパンという名称を決定した直後、当のINCIではOctaneは成分の化学構造を正しく表しておらず誤解を生じるとして”Trimethylolpropane Trioctanoate”を”Trimethylolpropane Triethylhexanoate”に改称してしまった。その結果、日本化粧品表示名称事典第1版が出版されたときには「Trimethylolpropane TriethylhexanoateというINCIに対して日本ではトリオクタン酸トリメチロールプロパンという表示名称を付けました」という日本だけおバカさんにみえる状況になってしまった。

 で、ここからややこしいことになってくる。第1版の出版から4年後、日本化粧品表示名称事典第2版の出版に際してトリオクタン酸トリメチロールプロパンはトリエチルヘキサン酸トリメチロールプロパンに改称されていた。ところが粧工連には「一度作成した表示名称は何があっても変更しないし削除もしない」というルールがある。このルールに従えばトリオクタン酸トリメチロールプロパンを改称してはいけなかったことになる。ルールに従うならトリオクタン酸トリメチロールプロパンは改正表示名称ができましたよという注釈を付けた上で放置してトリエチルヘキサン酸トリメチロールプロパンという表示名称を追加するのが正解ということになる。たとえば、オクタン酸セチルはこのルールに則って処理されている(オクタン酸セチルには改正表示名称がありますよという注釈を付けて放置し、エチルヘキサン酸セチルを追加登録している)。

 これは私の想像だからホントのところは全然わからないが、オクタンをエチルヘキサンに変更するのだけは例外として実施したいという考えと、どうであろうと変更はしないという考えが粧工連内部で混ぜこぜになってるんではないだろうか。粧工連関係者に話を聞くと人によって言うことが違うし、第2版で変更になっているのにホームページのデータは変更になっていないことも説明がつく。

 どっちでもいいんだけど、どっちかに決めてもらわないと困るんだよね。どっちつかずというのが一番悪い。どうしたもんか悶々とした日々を過ごしている薬事担当者が多いんじゃないだろか。私も悶々としている。

 ところで悶々としている薬事担当者に朗報。ここにきてルール堅持で確定と思える状況がでてきた。最新の表示名称追加分リストに以下の表示名称が出てきた。

  • エチルヘキサン酸アルキル(C12-15)(成分番号562731)
  • エチルヘキシルグリセリン(成分番号558813)
  • セバシン酸ジエチルヘキシル(成分番号560098)
  • トリエチルヘキサノイン(成分番号562335)
  • トリエチルヘキサン酸トリメチロールプロパン(成分番号562779)

 日本化粧品成分表示名称事典の第2版を正とするなら、これらの名称は全て重複してしまうので追加されないはず。しかし実際に追加リストにこれらが登場したということは第2版での名称変更は否定されたことが前提になる。えーっ、Cosmetic-Info.jpは日本化粧品表示名称事典準拠でやってるんだよなあ。厄介だなあ。

 日本化粧品表示名称事典第2版が出版されてからもう7年近く経つ。もういいかげん第3版が出てもいいだろう。第2版で名称変更された表示名称たちが第3版でどのように扱われるか確認してCosmetic-Info.jpの対応も再考しよう。はあぁぁぁぁ・・・・・(深いため息)

深呼吸する惑星

 先週、第三舞台の封印解除&解散公演「深呼吸する惑星」を観てきた。1980年代小劇場ブームのころ、高校で演劇部にいた私にとって第三舞台は特別な存在だった。躍動感あふれる演技や拳を握りしめて声を合わせて何か言う姿はモロに影響を受けた。と言うものの初めて見に行った小劇場演劇は夢の遊眠社だった流れで第三舞台の芝居は観ることがないまま高校を卒業して、その後もイッセー尾形とかつかこうへいとか観に行く機会はあったけど、ついぞ第三舞台の芝居は観る機会がないままここまできてしまった。

 2001年に第三舞台は10年間封印。封印解除の年だった10年ぶりの公演が解散公演。知人の尽力でチケットが手に入ったので、生まれて初めての第三舞台観劇が解散公演とあいなった。

 良かった、良かったよ。暑苦しくむさ苦しく燃えていた高校時代に強く影響を受けたあの時代の演劇が目の前に展開されている。筧利夫が小須田康人が大高洋夫が舞台を走り回っている。新参者の私にはネタ元がわかりにくい身内ネタがところどころ出てきても問題無し。いいんだよ、その身内ネタで盛り上がる雰囲気そのものがいいんだよ。体の中から熱くなってくる。あのころにタイムスリップしたよ。舞台の上にいる人たちはもう50才超えてる。それが80年代の学生コンパの勢いそのまんまの芝居をやるんだから冷静に見たらたらかなり痛々しいんだろうけど、そんなこたあ構わん。オレも42才だし。

 年始早々たくさんエネルギーをもらった。また今年一年がんばれそうだ。