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日本沈没2006>>2012

2006年版「日本沈没」が、原作や1973年版の日本沈没にハマってた我が身にとってはちょっと残念なデキだったので消化不良。うーん「海猿」ってタイトルにしておいてくれればよかったのに、と思うことしきり。返却ついでにツタヤでウロウロしてたら「2012」というDVDを見つけた。なにやら2010年上半期レンタルヒット作らしい。パッケージを見るとなんと「世界沈没」。さすがハリウッド。沈めるものが違うぜ。世界中がドッカンボッカンめちゃくちゃになって宇宙にでも脱出するんだろうか。母なる大地を失った地球人は地球人としてのアイデンティティをどこに求めたらいいのか。国家観、民族観、宗教観はどのように折り合わせていくのか。みんなニュータイプに覚醒しちゃうのか?!もうドキドキ、ワクワク。

見終わった感想

もう、どうでもいいです・・・・・想像してたのとは別次元の映画でした。

世界規模のマントル大移動が起きて世界のほとんどが2年後に沈没することが判明し、主要国の首脳たちは極秘で種の保存計画を進めることになった。そのことをたまたま知ってしまった売れない作家が、家族を守るために大奮闘。大地震の中を家族を乗せて車で大激走。地割れを飛び越え、火山の噴石を避けまくり、倒れてきた高速道路の下を間一髪でくぐり抜ける。そしてセスナ機を手に入れて地割れと追いかけっこしながら離陸。倒れてくる高層ビルの横をギリギリですり抜けていくっ!! 思わず「インディージョーンズかよ!」と突っ込みを入れてしまった。アドベンチャー映画だったのか、これ。とにかく地割れや噴石や洪水や火災がこれでもかこれでもかと都合よく襲ってきて、そのことごとくを間一髪でこれまた都合よくすり抜けていく主人公一家。ところどころに家族との別れなど「ほれ、ここで泣いておけ」みたいな指示が画面に映るんだけど泣けない。この展開で泣けと言われても無理だってば、ムリ。でもって偶然知り合った変なジイさんから極秘計画が進められている場所を印した秘密の地図をゲットする。秘密の地図を変なジイさんからゲットって・・・。ファンタジー映画だったのか、これ。なんと極秘計画は中国の山奥で進められていた。そこへ行けば自分たちも助かるかもしれない、しかし中国までどうやって行くんだ?ここで主人公一家は偶然にも何とジェット機を手に入れる。「ワラシベ長者かよ」と突っ込みを入れてしまった。ところが中国へ行く途中で給油のためにハワイに立ち寄ろうとしたら、ハワイは壊滅。そりゃ火山島だしな。あわや燃料切れで太平洋に墜落か?!と思ったら大陸大移動で中国の山奥がこんな近くまで来てました。ってヲイヲイ、どんだけ動いたんだよアジア大陸。そんなに動いちゃっても中国の山奥で進められている極秘計画の基地はビクともしてない。すごいぞチャイナクオリティ。

しかもこの映画158分もある。ここまでのジェットコースター展開でようやく前半終了って感じ。もうあとの展開なんてどうでもよくなった。あとは画面を見ながらひたすら時間が過ぎていくのを待ってただけ。なんかあんなことやこんなことやそんなことが起きたけど、もうどうでもいいや。説明する気力もない。でもここまで見ちゃったんだからとにかくオチだけは知っておきたい。早くオチろ、オチろ。で、待った挙げ句のオチがそれかよ。あ、ダメだ、ゴメン、オレには理解できない。人生において最も無意味な2時間40分を過ごしてしまった。

これ見ちゃったら昨日見た2006年版「日本沈没」がすばらしい映画に思えてきた。ひどいこと言ってごめんよ、2006年版日本沈没。海猿みたいだったけど、ちゃんとドラマになってたもんな。クサナギ君の淡白さは、藤岡弘の熱い漢魂と比べるとちょっと物足りないけど、柴崎コウのひょろっこい体でハイパーレスキュー隊員っていう設定にもかなりムリを感じたけど、そんなことはもうどうでもいいや。いい映画だったよ2006年版「日本沈没」。ま、タイトルが「海猿」だったらもっとよかったけどな。

あーっ、もう、このままではおさまりがつかん。とりあえず明日は1973年版「日本沈没」を見よう。この連休の夜を無駄に過ごしてしまったことを忘れるためにも、丹波哲郎と二谷英明と藤岡弘に熱く語ってもらおうぞ、島国日本国民にとって国土を失うということが何を意味するのかを!!

日本沈没1973>日本沈没2006

小説/映画「日本沈没」が好き。もともとは10年くらい前にレンタルビデオで映画版を見たのがきっかけ。日本が沈没するなんてありえないシチュエーションも東大名誉教授「竹内均」御大自らご出演のプレートテクトニクス解説と2年間かけて沈んでいくという時間感覚で笑えない程度の真実味は与えてくれる。

国土を失い流浪の民になったとき島国日本国民のアイデンティティはどうなってしまうのか苦悩する山本総理を演じる丹波哲郎の涙があまりにカッコよくて、二谷英明が率いる科学者チームの日夜問わずの働きや、計画に関わってしまった民間人の藤岡弘の漢魂にも熱くなる。あまりに衝撃的だったのでその後小説を買って読んだ。あー、もう日本沈没だけでご飯三杯食える。

そして今ごろになって2006年にリメイクされた映画「日本沈没」を見た。今までずっと何となくイヤな予感がしてちょっと遠慮してた。でも食わず嫌いはよくないんじゃないだろか。

見終わった感想

うーん、ちょっと小さくて軽くなっちゃったかな。日本沈没という未曾有の大災害に立ち向かう人々の群像劇だった1973版に対して2006版はクサナギ君と柴崎のこじんまりしたただのラブストーリーになってた。悪くはないと思ったけどこの程度のスケールなら「日本沈没」じゃなくて「海猿」でやってくれよ、と思った。そしてなにより残念だったのは災害の描き方が軽いってこと。圧倒的に軽い。CGを使って大都市が崩れる様子を描いているんだけど、軽い、軽すぎる。なんか水がバシャバシャ流れてきて、ビルがパラパラっと崩れて、はぁそれで?って感じ。40年前の模型を駆使した特撮シーンの足下にもおよばないなんてガッカリ。

しかもオチにもビックリ。もう5年も前の映画だからネタバレしてもOKだと思うから書くけど。クサナギ君の命をかけた活躍によって日本沈没が回避されるって・・・え?沈没しないの?! いくらラブストーリーだからってこのオチはないんじゃないの? しかも秘密兵器「N2爆弾」って、エヴァかよ。国民にとって国土を失うということは何を意味するのか。日本人というアイデンティティはどうなってしまうのか。そんなことを真剣に考えさせてくれる日本沈没が・・・たった1人の若者の活躍で沈没しないなんて・・・いやああぁぁぁぁっ!!!! 日本が沈没しない日本沈没なんて日本沈没じゃない!

海猿っていうタイトルにしておいてくれればオレも楽しめたのにな。

第9地区

 映画「第9地区」を観た。

 感想は「エイリアンという異物を題材にして差別問題について考えさせられる映画・・・のようでいて、実は北斗の拳ヒデブー&士郎正宗ランドメイドはカッチョエーなB級映画」

エイリアン映画としては異色の設定。

 南アフリカ上空に巨大な宇宙船が現れる。中には餓死寸前の宇宙人が大量にいた。どうやら宇宙船が故障して漂流状態になり、指導的立場にいたものは次々と死んでしまい、かろうじて生き残っていたのは民度の低いものばかり。宇宙船を修理する技術は失われ、しかたなく国連は宇宙船の近くに難民キャンプを作って彼らをそこに住まわせた。20年後、難民キャンプ周辺はスラム化していた。宇宙人との融和は進むどころか街には「宇宙人お断り」の貼り紙があふれ、民度の低い宇宙人を相手にあくどい商売をするマフィアも存在する。住民の「宇宙人は出て行け」の声に抗しきれず国連は都市部から遠く離れた地に新たな難民キャンプを作って宇宙人を強制移住させる作戦を始める、というところから物語が始まる。

 作戦の文民側リーダーに抜擢されたのは難民宇宙人の世話を委託されている企業のしがないサラリーマン。宇宙人の世話が担当とはいえ、宇宙人を(字幕では)「エビ」と侮蔑的に呼び、どうしょうもない生き物としか見てない。

 見た目は二本足で歩くザリガニという感じで、食生活マナーも(先進国といわれる)私たちの常識からみたら非常に悪い。徹底的に生理的嫌悪感を抱く生き物としてデザインされているので、観客も主人公と一緒に「うわー、なんかイヤだなあコイツら、キモチわるい」と簡単に難民宇宙人を差別する側に立つことができる。

 ところが宇宙人の強制移住作戦を始めた直後にとんでもない事故をきっかけに主人公は軍や国家から命を狙われる身になってしまう。命からがら逃げ出した主人公が身を隠す場所はもうスラム化した宇宙人難民キャンプしかない。そこである宇宙人親子と出会って・・・みたいにして物語が展開していく。

 宇宙人を嫌悪する異物と設定し、その宇宙人がどこであろう南アフリカに漂着して、白人-黒人-宇宙人の差別構造を構築することで全体を通して、差別問題を考えさせられる骨格が用意されている。これをスピルバーグが作ったら全編感動しっぱなしで涙と一緒に鼻水まで出てきちゃうような説諭大作ができあがったかもしれない。

 ところがこれだけの状況を構築しておきながらこの映画は絶妙に外してくる。説教臭くないどころか、もう、ランボー状態。命を狙われた主人公は宇宙人の超絶破壊兵器を手に入れて軍隊相手に反撃開始。ドッカン、ボッカン。そして悪いヤツら(傭兵やマフィア)は北斗の拳のようにヒデブーと吹き飛ぶ。とりあえずお子様は見ちゃダメです。デートで行くのもお勧めしません。なにしろヒデブーですから。そして力づくで押してくる傭兵部隊を主人公はさらなる超絶破壊兵器で迎え撃つ。アップルシードのランドメイドとか攻殻機動隊の強化外骨格って言ってわかる人にはわかるアレ。ま、小さなガンダムみたいなもんだ。これがまたよく動く動く。ドッカンボッカンヒデブーの連発。あまりの超絶兵器ぶりにヒデブーになって散ってしまう傭兵サンたちがちょっとかわいそうになってきました。

 成り行きでしかたなくとはいえ宇宙人親子のために命をかけて戦った主人公。その行く末を見せてくれたラスト2分が、それまでのランボー状態だった映画をなんとかしめてくれました。このラスト2分がなかったら、ただの実写版ヒデブー映画でしたよ。あぶない、あぶない。あのラスト2分のおかげで映画代1,800円が無駄にならずに済んだわ。差別問題についてちょっと考えさせられないこともないような気がするような感じがしないでもないヒデブー&強化外骨格エンターテイメント映画でした。