パソコンのバックアップにRAID1は必要か?

 デジカメで撮った写真をパソコンに貯め込んで管理するようになって早10年。パソコンが壊れる(正確には内蔵ハードディスクが壊れる)と10年以上にわたる家族の歴史を記録した貴重な写真や映像が失われてしまうことになる。バックアップは大切だよ。

 私のまわりでもパソコンのバックアップに気を使う人が増えたようで、バックアップ用のハードディスクを買おうと思ってるという話をよく聞くようになった。備えあれば憂いなし。いいことだ。が「せっかくだからRAID1というタイプにしようと思うんです」という話を聞くと、うーん、バックアップ用のハードディスクにRAID1って必要か?と思ってしまうというのが今日の話の内容。

 RAID1というのは、見た目は普通の外付けハードディスクなんだけど中には同じ容量のハードディスクが2台入っていて、データは両方のハードディスクに同時に書き込まれるようになっている。使い方は普通のハードディスクと何も変わらないのに、実は中では常に同じものが2つ作られているから万一片方のディスクが壊れてももう1台が生き残っているから安心。「ミラーリング」なんて呼ばれることもある。家電量販店でも「大切な写真やデータを守るために」とかなんとかキャッチフレーズで平置きになってる。

 例えば500GBの保存容量があるRAID1ハードディスクというのは中身は500GBのハードディスクが2台内蔵されているということになるので普通の500GBハードディスクに比べて当然値段は高い。バックアップ用ハードディスクにRAID1を使うことが悪いわけじゃないけど、使えるお金が無尽蔵にあるわけじゃないなら費用対効果を考えてRAID1よりも先にやっておいたほうがいいことがあるんじゃないのだろうかと思う。RAID1って宣伝されてるほど安心な装置じゃないよ。

 どういうことかというと、RAID1は2つのディスクが1つの装置の中に存在している。だからケーブルに足を引っかけて装置ごと床に落としたとか、雷で装置に過電流が流れ込んだとか、家が火事になって装置ごと焼けてしまったとか、という状況では簡単に2台のディスクが同時にアボーンする。また、RAID1には同じメーカーが同時期に製造した同モデルのハードディスクが2個入っていて、その2つのディスクは同日同時刻から同一環境で使われていくわけなのでほぼ同じ時期に寿命を迎えてしまう可能性が高い(さすがに同時にアボーンはないと思うが)。RAID1というのはその程度の安心感でしかない。

 そもそも「バックアップ」ということは原本がどこかに存在しているわけだ。どこかっていうか要するに普段使っているパソコンが原本ってことだね。すなわち普段使っているパソコンとバックアップ用ディスクの2カ所にすでに同じデータが記録されているわけで、どっちかが壊れてもどっちかが生きていれば何も問題ない状態になっている。そう、バックアップディスクをわざわざRAID1にしなくてもパソコン本体とバックアップディスクの2つですでに片方が壊れても何とかなるという保険はすでにかかっているわけだ。バックアップディスクをRAID1にしたら原本、バックアップ、バックアップで3台に同じデータを保持することになる。

 だったらバックアップディスクをRAID1するんじゃなくて、その3台目に相当するディスクを家が焼けたって大丈夫な物理的遠隔地に用意した方がお金の使い方としては有効じゃないかな。インターネット上にディスクスペースを用意してくれているサービスがいろいろある。最近は数十GBのディスクスペースでもほとんどタダ同然で提供されていることが多い。こういうサービスを利用して原本、バックアップ、ネット上へのバックアップの3箇所に分散する方がRAID1よりもはるかに安心だよと思う。