小松左京の代表作「日本沈没」。作中では数年のうちに日本国土の大半が海に沈むという事態に際して日本国民の海外退避計画が練られるんだけど、しょっぱなから日本人全員の退避は不可能という前提で話が進む。意外だったが、ちゃんと根拠のある数字で説明されてた。そのまま書き写しても面白くないので現代に当てはめると次のようになる。2010年の「日本人出国者数」は1,664万人(法務省入国管理局資料)。2010年の「訪日外客数」は861万人(日本政府観光局資料)。合計で年間2,525万人が日本から出ている。これら空路・海路は平均2割の空席だったとすると平時に日本から出国できるのは最大で年間約3000万人。そして2009年の日本人口は12,751万人(総務省統計局資料)。単純計算で日本人全員を出国させるのに4年3ヶ月かかることになる。非常事態なんだから空港や港湾を24時間動かして大量に出国できるはずと考えたくなるが、いざ沈没が始まれば空港や港湾設備は徐々に機能を失っていくので早々に平時の出国ペースすら維持できなくなる。「日本沈没」では2年ちょっとの時間をかけて日本がゆっくり沈んでいく設定だが、つまり2年後には空港、港湾設備は壊滅状態になるということだから、日本人全員が海外退避できる可能性はゼロという結論が出てしまう。
かように人の移動というのは簡単ではないということなのだけど、なんでこんなことを今さら思い出したのかっていうと
人類が、増えすぎた人口を宇宙に移民させるようになって、すでに半世紀。地球の周りには巨大なスペースコロニーが数百基浮かび、人々はその円筒の内壁を人工の大地とした。その人類の第二の故郷で人々は子を産み、育て、そして死んでいった・・・。ガンダムを見ててね、スペースコロニーかぁ、人がいっぱい宇宙へ行くんだなあ・・・ていうか行けるのか?そんなに大勢の人間が。ふと思ったわけです。うわっ、長い前振りだったなあ。
んじゃ、計算してみよう。世界人口は現在約70億人。人口問題を解決するのが目的なんだからまずは最低でも総人口の1割、7億人は宇宙へ行ってもらわないと話にならんだろう。人を宇宙へ運ぶ方法としては現役を引退してるけどスペースシャトルみたいなものがやっぱり必要になるよな。スペースシャトルのカーゴベイ(荷物入れ)を改造して旅客機にしたら何人乗れるんだろう。
スペースシャトルは悪天候でケネディ宇宙センターに着陸できないときエドワーズ空軍基地などの代替基地に着陸する。その場合、スペースシャトル運搬専用に改造されたボーイング747の背中に乗せられてケネディ宇宙センターに戻ってくる。その写真を見て想像してみる。
ボーイング747は座席を詰め込めば500人くらいは乗れるらしい。その半分くらいの大きさだからスペースシャトルは300人ぐらい運べるかな。いや、ここはボーイング747並みにデカいスペースシャトルが出来上がると考えて1回で500人運べるってことにしよう。うん、うん、そうしよう。
スペースシャトルで1回に500人を宇宙へ運べるとして7億人を宇宙へ上げるには140万回打ち上げる必要がある。これ、なんと毎日毎日休みなく打ち上げ続けて3,835年もかかる! 数千年かけてやっと総人口の1割を宇宙へ運ぶ・・・これじゃ人口増加に対してあまりにも遅すぎ。まったく効果なし。
だいたいにして現在、地球人口は年間8,000万人のペースで増えているらしいから、人口問題を解決するならそれを上回るペースで人を宇宙へ運ばなきゃならんから少なくとも年に1億人ずつ宇宙へ運ばなきゃダメってことだろう。これって1日に27万人を宇宙へ運ぶ計算になるから、500人乗りのスペースシャトルを毎日550機打ち上げるってこと。スペースコロニーで人口問題解決なんてもう無理無理。
あーあ、夢がねえなぁ。
そう、夢、夢だよ、夢! スペースシャトルなんてチンケなもので運ぼうと思うから無理無理な話になっちゃうんじゃん。なんかこう、すごい輸送手段がさ、1日に30万人くらい余裕で宇宙へ運べるよな、スゲー何かがさ、こう、ドーンと発明されちゃえばいいだけじゃんよ。オヒョー、誰か作ってくれ。軌道エレベーターとかさ。