実質負担0円で太陽光発電導入?

 先日、私の留守中に太陽光発電設備の販売業者がやってきてカミさんが対応した。いろんな訪問販売業者がやってくるがカミさんは箸にも棒にもかけずに断るのに、なぜか太陽光発電には弱いようだ。私が帰宅したら玄関に「19:30に面談ご予約」なるものが書かれた訪問票が置いてあった。5年くらい前にも同じシチュエーションがあったよ・・・・デジャぶぅ!!

 太陽光発電装置はタダじゃない。6年くらい前に実家が太陽光発電を導入したとき300万円強くらいだった。だいぶ安くなってるだろうけど今だって200万円くらいするんじゃないのか? 我が家の電気代は年間を平均するとだいたい15,000円/月。もしこれが全部太陽光発電でまかなえて15,000円が浮いて、しかも余った電力を売電できて月に3,000円もゲットなんていうありえないラッキーシチュエーションがずーっと続いたとしても200万円の設備費をチャラにするのに10年かかる。これ200万円を即金で払った場合ね。ローン組んだら利息の支払も上乗せになるから軽く10年以上かかる。10年以上も先にあるかもしれないおトク感なんてリスク高すぎ。そんなハイリスクは住宅ローンだけでもうお腹いっぱいです。って5年くらい前にも同じシチュエーションがあったよ・・・・デジャぶぅ!!

 カミさん曰く「でもね、なにやら実質負担0円だって言うのよ・・・・」。アホか、お前は。白犬のスマホじゃないんだから実質負担ゼロって、じゃあ業者はどこから金とってくるんだよ。スマホは端末タダでも通話料で取り返せばチャラっていうロジックは成立するが、この太陽光発電装置は東電が売りにきたわけじゃないんだよ。電気代は東電に払うんだから設備費を電気料金で回収するっていうロジックは成り立たないだろ。まったくもう・・・・ブツブツ・・・・

 でも「ご主人がいらっしゃるときに詳しい話を・・・・云々」ってことで面談時間を設定しちゃってるんで会わないわけにもいかず。せっかくだから「実質負担0円で太陽光発電を導入」ってのがどういうロジックなのか気になるし話を聞いてみようじゃないか。まさか円じゃなくてドル払いですとか外貨投資勧誘かよってオチでもあるまい。

 誠実そうな顔をした営業マンがやってきた。で、お決まりの微妙に上ブレすぎる予想のグラフを見せながら「これから電気代はどんどん値上がりしていきます」「お子さんの成長に伴ってドライヤーなど使う電気の量も増えていきます」など既視感タップリのアオリ・・・・デジャぶぅ!! 原発事故をからめて説明することで説得力は増しているけど。いや、オレが聞きたいのはそこじゃないんだ、実質負担0円の仕組みなんだよ。ここに書いてある「実質負担0円で太陽光発電を導入できるかもしれません」ってのはどういう仕組みなんだよ。

要するにこういうことのようだ↓

 太陽光発電を導入すれば電気代が節約できる。日中に外出が多い家庭なら余った電気を売電できる。節電や売電で浮いた電気代を設備のローン支払にまわす。国や県の補助金が充実している今なら浮いた電気代程度で返済できるローンが組める(かもしれない)。

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私なりにわかりやすく書いたけど営業マンはもっとわかりにくく言うもんだから10秒くらい黙り込んで考えちゃったよ。

  1. 月々○○円の電気代を払い続けて、そのあとに何も残らない。
  2. 月々○○円のローン返済を続けると、そのあとに太陽光発電設備が残る。

この2択をせまってるわけか。家賃を払い続けて何も残らない賃貸住宅か、同額をローンにすれば自分のものになる持ち家かの2択と似た構造。ローン返済が終わるまでは家計の負担額は変わらないっていうのが「実質負担0円」の意味するところなのだ。太陽光発電を導入しても家計の負担額は増えもしなければ減りもしない。でもそのまま10年か20年するといつの間にかローン返済が終わっててそこからは太陽光発電設備のおかげで家計の負担額は一気に安くなる。なるほどね、理解できたよ。

 神奈川県は黒岩知事が「エネルギー革命」「かながわスマートエネルギー構想」と銘打った太陽光発電設備導入への補助金制度が充実している。国の補助金などいくつか組み合わせれば、実質負担0円(補助金+節約分+売電分=ローン返済額)で太陽光発電を導入できる家もあります。すべての家が実質負担0円で導入できるわけではないので、まずは日照条件や電気の使用状況、対象になる補助金の種類などを詳しく調べさせて欲しいというのが営業マンの言。調べた結果、ホントに実質負担0円で導入できそうだという結論がでたら、ぜひ購入してほしいと。

神奈川県が推進する「かながわスマートエネルギー構想」についてはこちら→http://www.pref.kanagawa.jp/cnt/f300183/

 なるほど、神奈川県の手厚い補助金を活用すれば借家か持ち家かの2択と同じ考え方ができる程度には安くなってきたってわけか。

 で、どうしたかって? もちろん丁重にお断りしたよ。最初に書いた通り10年も20年も先のおトク感なんてリスク高すぎ。それも(補助金+節約額+売電額)を試算してその範囲におさまるローンを組めるかどうかを調べましょうってことだから、試算を信じて実際に導入したら節約額や売電額が思ったより小さくてガビーンでも月々のローン返済額を下げてくれるわけじゃない。それに太陽光発電は消耗品だから故障すれば修理費だって必要だ。10年保証とか25年保証とか見かけるけど、あれよく見ると「パネル」の保証がほとんど。てことはパネル以外の設備が故障したら有償修理。だいたいパネルの保証だってかなり怪しい。パネルは駆動系がないからぶっ壊れることはほぼないのはわかる(20年前に買ったソーラ電卓まだちゃんと動いてるし)、心配なのは「経年劣化」だ。太陽光パネルの発電能力は徐々に低下していく。しかしお天気次第で発電量が大きく変化するのでパネル性能がどの程度劣化してるかは調べようがない(屋根を完全遮光して一定量の光を当てたときの電流量をチェックするなんて実質不可能)。証明できないんじゃ劣化は保証の対象にならないとみるのが正解だろう。修理費や劣化を含めたら予想通り10年なり20年でにチャラになる可能性はよりいっそう低くなる(なにしろ業者の試算は修理や劣化が起きない前提になってるから)。そしてなにより技術進歩の早い分野だから10年もあればパネルは今とは比べられないほど低価格で高性能になるだろう(液晶テレビが10年間で性能は格段に向上して値段は10分の1になったように)。家計負担が変わらないまま10年待ったあげくようやく手に入いれたパネルは今や20万円の激安品にも劣る超旧型パネルに成り下がってた、なんてこともありうる。他にも高い建物が建って日陰の時間が30分増えただけでも発電量が10%近く低下するとか、いろいろリスクありすぎてとてもじゃないが実質負担0円でも導入する気にはなれない。

 あとで調べてわかったんだけど、たぶん神奈川県が民間と共同で進めてる「かながわソーラーバンクシステム」構想の一環でこの業者もその参加企業だったんじゃないかな。話していた内容がかなり似ている。↓

「実質負担ゼロ」21プランに拡大、太陽光パネル設置で県が推進策発表/神奈川
 県は10日、住宅用太陽光発電設備を安価に提供する仕組み「かながわソーラーバンクシステム」に共同住宅用を新設し、6月まで計87プランで運用すると発表した。売電収入で設置費用が回収可能な「実質負担ゼロ」の設定は21プランに拡大。県は補助金利用とセットでPRし、利用低迷からの脱却を目指す考えだ。
(中略)
 黒岩祐治知事の肝いりで昨年12月に創設したソーラーバンクシステム。今年3月末までに1200件の見積もり申請が目標だったが、実績は261件と「がっくりするくらい少ない」(黒岩知事)状況。知事はPR不足などを低迷の理由に挙げ、「補助金が使えるうちに申し込みを」と早期利用を呼び掛けている。
2012年4月10日神奈川新聞

 黒岩知事さん、悪いけどその話には乗れないわ。PR不足ってのもあるかもしれないけど、性能向上と価格下落が続いている太陽光発電設備を買わせたいならせめて2、3年で元が取れるくらいの補助がないと割にあわないよ。