5 界面活性剤 / 化粧品の成分

親水基と疎水基(親油基)で構成される両親媒性化合物が「界面活性剤」である。

界面活性剤の分子構造概略図

親水基は水に溶けようとし、疎水基(親油基)は油に溶けようとするため、水と油が共存する系では、界面活性剤は自然と水と油の界面に集まる。水と油の境目に勝手に集まるこの性質は界面活性剤の最大の特徴である。

界面活性剤の性質
(水と油の境目に自然と集まって膜を作る)

水と油の界面に集合した界面活性剤は遠目に見れば片面が親水性、もう片面が親油性の性質を持った1枚の薄い膜とみることができる。界面活性剤は水と油の境目に勝手に集まり薄膜を形成し、水と油を分けた状態にできる。

5.1 界面活性剤と乳化

水と油が共存する系を強く攪拌すると混合状態になる。セパレートタイプのドレッシングを強く振り混ぜた状態と同じである。ところが、この混合状態はすぐに元の分離状態へ戻ってしまう。その理由と、混合状態が長く維持される乳化現象について説明する。

水分子と水分子の間には水素結合による強い引力が働くが、水分子と油分子の間にはほとんど引力は生じない。

水分子同士には図中の黄線のような互いを引き寄せる力(水素結合)が働く
水油混合系の簡易シミュレーション。
水分子-水分子間には引力が働くが、水分子-油分子間には引力も反発力も生じない。

このため水分子同士が集まろうとし、油分子は結果的に押し出される格好となり、水と油に分離する。なお、水分子-水分子間力と水分子-油分子間力のように2つの分子間力に大きな差がある状態を「界面張力が高い」と表現する。

水分子同士だけが集まろうとして結果的に油は押し出される。

さて、水と油を強く攪拌して混合状態にしたところに今度は界面活性剤を加えた場合はどうなるだろうか。界面活性剤は水と油が共存する系では自然とその界面に集合して膜を形成するので、界面活性剤は油滴の表面(水と油の界面)に集合して膜を形成する。

界面活性剤が水と油の界面に集合して膜を形成する

水と油の分離は、水分子-水分子間の引力と水分子-油分子間の引力の差が大きいことに起因している(水同士だけが集まろうとする力で油が押し出される)ことは先に述べたとおりである。しかし、界面活性剤が水と油の界面に集合して膜を形成すると水と油が分断され、状況が大きく変わる。水分子-水分子間の引力と比較する相手が、水分子-油分子間の引力ではなく、水分子-界面活性剤(の親水基)間の引力に替わる。界面活性剤の親水基部分は水素結合性を有する構造(水に溶けやすい構造)なので、水分子と界面活性剤の間にも水素結合が生じる。

水分子と界面活性剤の親水基との間には水素結合が生じるので界面張力が低下する。

水分子-界面活性剤(の親水基)間にも引力が働くため両者の力の差は小さくなり、水と油の混合状態が安定化する。水分子-水分子間の引力と水分子-界面活性剤(の親水基)間の引力のように分子間力の差が小さい状態を「界面張力が低い」と表現する。

もともとは混ざり合わない2種の液体が長時間均一に混ざった状態を「乳化」という。界面活性剤は水と油の間に両親媒性の膜を作ることで界面張力を低下させ、長時間にわたって水と油が均一に混合した乳化状態を作ることができる。2種の液体が均一に混ざった状態を長時間維持できる界面活性剤のこの性質は、化粧品において「洗浄」「乳化」「分散」といった役割を果たすために活用される。

ちなみに、油分子同士の間にはほとんど引力は生じないのだが、水と油が分離する様子は、油分子同士にもなにか引力のようなものが働いているかのようにも見える。実際には水分子同士の引力によってただ押し出されているだけで油分子同士に何の相互作用もないにも関わらず、水の存在下では油同士にも引力が発生しているかのように見えるこの現象を「疎水性相互作用」という。

5.2 界面活性剤の種類

界面活性剤は、親水基のイオン性によって4種類に分類されており、それぞれ特徴的な性質があり、その特徴を活かした使われ方をしている。

  • 親水基がマイナスイオンになっている界面活性剤:アニオン界面活性剤(陰イオン界面活性剤)
  • 親水基がプラスイオンになっている界面活性剤:カチオン界面活性剤(陽イオン界面活性剤)
  • 親水基がpHによってマイナスになったりプラスになったりする界面活性剤:両性界面活性剤
  • 親水基がイオン化しない界面活性剤:ノニオン界面活性剤(非イオン界面活性剤)

5.3 アニオン界面活性剤

親水基がマイナスイオンになっている界面活性剤を総称してアニオン界面活性剤という。主にカルボキシ基(-COOH)、硫酸基(-SO4H)、スルホン酸基(-SO3H)を有し、ナトリウムまたはカリウムとイオン結合している化合物が使われる。水に溶解した時にナトリウムまたはカリウムがプラスイオンになって電離し、反対側の部分がマイナスイオンを有する界面活性剤になる。両親媒性ではあるがイオン性をもつため水への溶解性が非常に高いのが特徴で、その性質を活かして水の中にすばやく油汚れを混合して洗い流す洗浄剤として使われることが多い。

5.3.1 高級脂肪酸アルカリ金属塩(石ケン)

高級脂肪酸ナトリウム塩(石ケン素地)
水中では右のように電離してアニオン界面活性剤になる
高級脂肪酸カリウム塩(カリ石ケン素地)
水中では右のように電離してアニオン界面活性剤になる

高級脂肪酸アルカリ金属塩は「高級脂肪酸+アルカリ金属」の構造を持つ、一般には「石ケン」と呼ばれている化合物の総称である。アルカリ金属はほとんどの場合ナトリウムまたはカリウムである。水に溶解させると負に帯電した高級脂肪酸部分と正に帯電したアルカリ金属イオンに電離する。このとき生ずる負に帯電した高級脂肪酸部分がアニオン界面活性剤である。

工業的には高級脂肪酸を水酸化Naまたは水酸化Kで中和して製造する方法(中和法)と油脂を水酸化Naまたは水酸化Kでアルカリ加水分解して製造する方法(ケン化法)の2つがある。

中和法による石ケンの合成
高級脂肪酸1分子に水酸化ナトリウム1分子を反応させると中和反応によって石ケン1分子と水1分子が生成する。
ケン化法による石ケンの合成
油脂1分子に水酸化ナトリウム3分子を反応させるとアルカリ加水分解反応によって石ケン3分子とグリセリン1分子が生成する。

中和法で製造した石ケンは、ラウリン酸Na、ミリスチン酸K、パルミチン酸Na、ステアリン酸Kなど化学名と同等の表示名称が使われることが多い。

一方、ケン化法で製造した石ケンは使用する油脂によって生ずる高級脂肪酸の種類や比率はまちまちでステアリン酸、ラウリン酸など具体的な高級脂肪酸の名称を用いることが困難である。そのため具体的な脂肪酸の種類を特定せず元となった油脂の名称を使ったパーム脂肪酸Na、ヤシ脂肪酸Na、オリーブ脂肪酸K、ヤシ脂肪酸Kといった総称が使用される。

また、製造法によらずナトリウム塩の石ケンを総称して「石ケン素地」、カリウム塩の石ケンを総称して「カリ石ケン素地」という表示名称もあり、さらにそれら全てを総称する「カリ含有石ケン素地」という表示名称もある。「石ケン」という文字は安心感があるため、化学物質風の名称を嫌う消費者に向けた商品ではこのような総称がよく使われる。ただし、これら石ケン成分の総称は日本独自のもので、海外で多く使われている成分名(INCI名)には存在しないため、輸出の際の全成分リスト(INCIリスト)作成には注意が必要である。

石ケンの製造方法と表示名称

石ケンは、弱酸と強塩基の塩なので、その水溶液は弱アルカリ性を示す。石ケンの水溶液に酸を加えてpHを中性や酸性にすると石ケンの電離平衡がずれて高級脂肪酸が油塊として析出する。これでは界面活性剤ではなくなってしまうため、石ケンを配合する化粧品は弱アルカリ性で設計する必要がある。

5.3.2 N-アシルアミノ酸塩(アミノ酸系)

N-アシルアミノ酸塩
高級脂肪酸 + アミノ酸 + ナトリウムまたはカリウムが結合した構造

アシル基(R-CO-)がアミノ酸の窒素原子(N)に結合した構造とみなしてN-アシルアミノ酸塩という分類名称になっているが、視点を変えて「高級脂肪酸+アミノ酸+アルカリ金属」の構造とみた方が石ケンや他のアニオン界面活性剤の分子構造と比較して理解しやすい。実際、工業的には高級脂肪酸塩化物にアミノ酸を反応させる合成法がある。また、N-アシルアミノ酸塩よりは一般には「アミノ酸系界面活性剤」と呼ばれることが多い。

アミノ酸構造によってpKaが酸側に存在するため弱酸性でもアニオン性を維持できるものが多いのが石ケンと比べた時の最大の特長である。そのため石ケンでは不可能であった弱酸性の商品を設計することもN-アシルアミノ酸塩では可能である。人の皮膚表面のpHは弱酸性であるため、弱酸性の洗浄料は肌に優しいという印象を多くの消費者が抱いており、その設計に必要となるN-アシルアミノ酸塩も肌に優しい界面活性剤という印象を持たれている。

化粧品でよく使われるアミノ酸系界面活性剤として、ステアロイルグルタミン酸Na、パルミトイルサルコシンNa、ココイルグリシンKなどが有名である。

ステアロイルグルタミン酸Na
パルミトイルサルコシンNa
ココイルグリシンK
ココイルメチルタウリンNa

なお、タウリンは栄養学分野でアミノ酸に分類されているが、化学ではアミノ酸には分類されない(カルボキシ基とアミノ基を有する有機化合物をアミノ酸と定義しているのでカルボキシ基をもたないタウリンは化学分野でアミノ酸に分類されない)。N-アシルメチルタウリン塩はスルホン酸基を有したアニオン界面活性剤でありその性質からもスルホン酸塩に分類した方がわかりやすいが、消費者には化学的性質よりもアミノ酸という文字のもつ安心感が重要であるため栄養学での分類を準用してアミノ酸系界面活性剤としていることが多い。

5.3.3 硫酸塩、スルホン酸塩

硫酸基やスルホン酸基のようなイオウ原子を核にしたアニオン性官能基を持つアニオン界面活性剤。カルシウムイオンやマグネシウムイオンなどの多価カチオンと不溶性の金属錯体を形成しにくい(耐硬水性に優れる)のが最大の特徴で、その特性を活かして毛髪用洗浄料の洗浄剤としてよく使われている。

高級脂肪酸アルカリ金属塩(石ケン)は、カルシウムイオンやマグネシウムイオンなどの多価カチオンと金属錯体を形成して不溶性の固形物(石けんカス)に変化する。カルシウムイオンやマグネシウムイオンはさほど珍しいものではなく、天然水にも水道水にも含まれていて一般に「ミネラル分」と呼ばれている。石けんを洗い流すために多量の水をかけると、水に含まれるミネラル分と石ケンが結合して石けんカスが生じる。

石ケンとカルシウムイオンによる金属錯体
(水に溶けない固形物で、石けんカスとも呼ばれる)

石けんで顔や体を洗った場合にも石けんカスは生じて一部は肌表面に付着するが、洗い上がり後に若干つっぱり感を生ずる程度でほとんど認識されることはない。しかし毛髪の場合には毛髪表面に細かく付着して極端に指通りが悪くなり洗い流しが困難になったり、指やクシが引っかかり毛髪を痛めたりする。そのため毛髪の洗浄に石ケンは適さない。

そこで毛髪の洗浄用にはミネラル分を多く含む水(硬水)を使っても石けんカスを生じにくい界面活性剤が必要となる。このような性質を持つアニオン界面活性剤として、ラウレス硫酸Na、オレフィン(C14-16)スルホン酸Na、ココイルメチルタウリンNaといった硫酸塩系・スルホン酸塩系の界面活性剤が開発された。これらは耐硬水性のアニオン界面活性剤として毛髪洗浄料を中心に用いられる。

ラウレス硫酸Na
オレフィン(C14-16)スルホン酸Na
ココイルメチルタウリンNa

5.3.4 アニオン界面活性剤の使い分け

国内では古くから使われ続けている安心感から洗浄剤に石ケンを好む消費者が多い。そのため顔用や体用の洗浄料では多くの商品で石ケンが使われている。また「アミノ酸」「弱酸性」という言葉の安心感からN-アシルアミノ酸塩もよく使われる。一方で、硫酸塩・スルホン酸塩は成分名がいかにも化学物質然としていることや、硫酸塩・スルホン酸塩を危険視することで相対的に石ケンやアミノ酸系界面活性剤の良さを強調しようとするマーケティング手法もあって、消費者ウケがあまり良くない。そのため硫酸塩・スルホン酸塩は耐硬水性が極めて重視される毛髪用洗浄料への使用に偏っている。

このように国内では顔・体は石ケンおよびアミノ酸系、毛髪は硫酸塩またはスルホン酸塩といった使い分けが多い。ところが、欧州など水の硬度が高い国や地域では、顔や体を洗浄する際にも石ケンでは石けんカスの発生が顕著に現れて洗浄料として機能しにくいため、顔用や体用でも硫酸塩またはスルホン酸塩などの耐硬水性アニオン界面活性剤を使った製品が多い。そのため欧州などでは顔、体、髪問わず石ケンを使用した洗浄料は少ない。国内でも、顔、体、髪問わず使える洗浄料として硫酸塩またはスルホン酸塩の界面活性剤を主体にした洗浄料が販売されている。

5.4 カチオン界面活性剤

親水基がプラスイオンになっている界面活性剤を総称してカチオン界面活性剤という。プラスイオンになる構造として4級アンモニウム塩構造を有する化合物がよく使われる。

アニオン(マイナスイオン)界面活性剤の代表例である石ケンに対して、カチオン(プラスイオン)界面活性剤はマイナスとプラスが逆という意味で「逆性石ケン」と呼ばれることもある。

水に溶けるときに右のように電離してプラスイオンを生ずる

プラスイオンを有することから静電気を中和する「帯電防止剤」としての使われ方が多い。また、カチオン界面活性剤の中には殺菌力に優れる成分もあり、そういった成分は「殺菌剤」として薬用石鹸や手指消毒剤に使用される。

5.4.1 帯電防止剤

プラスイオンが静電気を電気的に中和するので、カチオン界面活性剤は静電気を防ぐ「帯電防止剤」としてヘアケア製品で使われることが多い。ステアルトリモニウムクロリドやベヘントリモニウムクロリドといった塩化物が多いが、ステアルトリモニウムブロミドといった臭化物もある。

ステアルトリモニウムクロリド
ベヘントリモニウムクロリド

ヘアトリートメントの設計では、乳化に「界面活性剤」、帯電防止作用に「カチオン化合物」、髪に塗布しやすい適度な硬さを出すために「増粘系」の3つが必要である。カチオン界面活性剤はある種の高級アルコールと組み合わせるとゲル構造形成による増粘作用を発揮することが知られている。そのため1つの成分で「乳化剤」「帯電防止剤」「増粘剤」の3つの働きを一つの成分で担える(増粘作用は高級アルコールとの組み合わせで発揮する)カチオン界面活性剤は、ヘアトリートメントの設計をシンプルにまとめるのに非常に有効であり、カチオン界面活性剤と高級アルコールの組合せは古くからヘアトリートメント設計の定番中の定番である。

ノンパラベン、ノンシリコーン、ノンカチオンに代表されるように、定番の設計手法をあえて外すことで、他にない特別な化粧品にみせる差別化手法がある。パラベンが、シリコーンが、カチオンが肌に合わない人にとってそれぞれの化粧品はまさに特別な化粧品として一定の需要がある。しかしそのような特別な設計を必要としていない人にまで対象を拡大しようとして、定番の設計手法があたかも多くの人にとって悪いことであるとする情報も同時に出回っている。若い技術者がこのようなマーケティング情報に踊らされて基礎技術や定番設計を習得する機会を自ら不要とするのは非常に残念である。定番設計はなぜ定番なのか、先人が積み上げてきた安心安全安定思想に基づく技術蓄積は大切にしてほしい。

5.4.2 殺菌剤

ベンザルコニウムクロリドなど一部のカチオン界面活性剤には高い殺菌力を有するものがあり手指消毒製品の有効成分として使われている。

ベンザルコニウムクロリド

4級アンモニウム塩に殺菌作用があることはかなり古くから知られており、その中でもベンザルコニウムクロリド(医薬部外品では「塩化ベンザルコニウム」)は安全性と殺菌性のバランスに優れた成分として長年使われている。

5.5 両性界面活性剤

親水性基の電荷がpHや他のイオン性化合物の存在によって変化する界面活性剤を総称して両性界面活性剤という。アルカリ性側(水素イオン濃度が低い)ではアニオン界面活性剤として、酸性側(水素イオン濃度が高い)ではカチオン界面活性剤としての性質を示す。

幅広いpHでイオン性界面活性剤としての性質を有し、耐硬水性にも優れることからシャンプーや皮膚洗浄料の洗浄剤として、また乳化助剤として、さまざまな製品で幅広く使用されている。コカミドプロピルベタイン、ココアンホ酢酸Naが有名である。

コカミドプロピルベタイン
ココアンホ酢酸Na

5.6 非イオン界面活性剤

親水基がイオン化しない界面活性剤を非イオン界面活性剤またはノニオン界面活性剤という。

イオン性をもたないため、pHや他のイオン性化合物による影響をほとんど受けることなく、さまざまな条件で安定した界面活性作用を発揮することができる。そのためさまざまな化合物の存在下で長期間に渡って安定に乳化状態を維持しなければならない乳液やクリームなどの乳化物を設計する際の乳化剤として用いられることが多い。また、非イオン界面活性剤は泡立ちの低いものが多いのでクレンジングジェルや食洗機用洗剤など泡立ってしまうとかえって使いづらくなる洗浄料での洗浄剤として使われることもある。

疎水基の構造には高級脂肪酸がよく使われ、親水基の構造にはグリセリン、糖類、PEGがよく使われる。疎水基にステアリン酸、親水基にグリセリンを用いて両者をエステル化反応で結合させたステアリン酸グリセリルはその典型例である。

非イオン界面活性剤の一般的な構造
ステアリン酸グリセリル
(ステアリン酸とグリセリンをエステル結合させたもの)

非イオン界面活性剤の表示名称は、ステアリン酸グリセリル、オレイン酸ソルビタン、ステアリン酸PEG-40、PEG-60水添ヒマシ油といった分子構造を想像しやすい名前が多いが、ポリソルベート60のように表示名称では構造が想像できない成分も一部にはある。

イオン性界面活性剤は強い電荷を有するため親水基と水分子との結合力が強くその結果非常に水に溶けやすいのが特徴である。一方、非イオン界面活性剤の親水基はイオン化していないためそれほど強い水和性がない。そのため、疎水基の構造を少し大きくするだけで親油性の強い界面活性剤を作ることができる。親水基と疎水基の構造のバランスによって親水性の界面活性剤から親油性の界面活性剤まで豊富なバリエーションがそろっているのも非イオン界面活性剤の特徴である。

さまざまな非イオン界面活性剤
(他のイオン性化合物やpHの影響を受けにくい、親水性から親油性までバリエーションが豊富)

非イオン界面活性剤を使った乳化物の調製に関する研究は古くから行われており、非イオン界面活性剤の性質(親水性/親油性)と、乳化物の型(水中油型/油中水型)との関係を経験則としてまとめたHLB法や有機概念図法は乳化物設計における界面活性剤選択の重要な指針となっている。