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1 概要/化粧品の成分

かつては国が許可した成分だけが化粧品に配合可能である許可制であった。この制度で新たな成分の配合許可を得るには多くの時間と多額の費用がかかることから成分数はそれほど増えることなく3,000程度に留まっていた。2001年4月に化粧品成分の自由化が実施され、化粧品成分は製造販売元の自己責任において原則自由に決めることができるようになった。それ以降、化粧品成分の数は急速に増え続け、実際に使われたかどうかやどの程度使われているか不明ではあるものの、名称の数だけで言えば15,000にまでなっている(2020年現在)。

ただし自由といっても完全に自由ではなく、ある程度の規制は残っている。規制のほとんどは「化粧品基準」(平成12年9月29日厚生省告示第331号)に記載されているが、まとめるとおおむね以下の通りである。

  1. 医薬品の成分は配合禁止(ただし旧化粧品種別許可基準に収載の成分、2001年4月より前に化粧品の配合成分として承認を受けているものおよび薬食審査発第0524001号「化粧品に配合可能な医薬品の成分について」に収載の成分は、医薬品の成分であってもその前例範囲内で配合可能)。
  2. 生物由来原料基準に適合しない原料、化審法の第一種特定化学物質/第二種特定化学物質、化粧品基準別表第1の成分は配合禁止。
  3. 化粧品基準別表第2に収載の成分は記載の配合上限を守る。
  4. 化粧品に使用可能な防腐剤は、化粧品基準別表第3に収載の成分のみ。
  5. 化粧品に使用可能な紫外線吸収剤は、化粧品基準別表第4に収載の成分のみ。
  6. 化粧品に使用可能な有機合成色素は「医薬品等に使用することができるタール色素を定める省令」(昭和41年8月31日厚生省令第30号)の成分のみ(赤色219号及び黄色204号については毛髪及び爪のみ)。

化粧品基準別表第1および第2は制限成分の一覧で一般にネガティブリストと呼ばれ、別表第3および第4は許可成分の一覧なのでポジティブリストと呼ばれている。

これ以外にもいくつかの規制があるので完全自由化ということではないが、海外もおおむね日本同様にネガティブリストとポジティブリストの併用による規制になっている。また、国によって具体的な規制内容は異なっているため、輸出入の際には使用している成分やその配合量がその国の規制に準じているかどうかの確認が必要になる。

1.1 自由なので公定規格は存在しない

何を化粧品の成分として使うかは化粧品製造販売元の自己責任において自由に決めることができるようになったということは、別の言い方をすると「どれが化粧品の成分なのか決まっていない」「化粧品の成分が何個あるのか誰にもわからない」ということである。それまで国の責任と管理の下で決まっていた化粧品成分が、製造販売元の自己責任と自己管理に変わったのだから当然ではあるが、2001年4月より前から化粧品技術や薬事の仕事をしている人や、医薬品業界から化粧品に移った人の中にはいまだに慣れなく戸惑う人も多い。

化粧品成分が国による許可制だった時代は、化粧品成分を定義する「化粧品原料基準(粧原基)」や「化粧品種別配合成分規格(粧配規)」といった厳密な公定規格が存在していた。たとえば「オリブ油」については『オリーブの果実を圧搾して得た油で、酸価が1以下、けん化価が186〜194、ヨウ素価が79〜88、不けん化物が1.5%以下、・・・・・・云々の成分を「オリブ油」とする。』のような厳密な規格が国によって定められていた。そのため、たとえオリーブの果実から得た油でも抽出法で得た油はオリブ油ではなかったし、オリーブの果実から圧搾して得た油でも不けん化物を1.6%含んでいる油はオリブ油ではなかった。国が定めた化粧品成分「オリブ油」の規格から外れるからである。

化粧品成分の自由化とは国が化粧品成分を管理しないということであるから、国が化粧品成分を管理するための規格は不要となった。そのため粧原基、粧配規といった化粧品成分の公定規格は平成13年3月31日で廃止となっている。現在の法律では、酸価1.2以下までをオリーブ果実油とするも、酸価0.9以下をオリーブ果実油とするも、抽出法で得た油をオリーブ果実油とするも、不けん化物が何%であってもオリーブ果実油とするも、すべて化粧品製造販売元の自己責任において自由である。オリーブの果実から得た油なら、あとはどんな分析をしてどんな結果になるものをオリーブ果実油とするかといった細かい規格は、それぞれの化粧品製造販売元が法律の範囲内で自己責任のもと自ら考えて決めるのである。

1.2 自由なので化粧品成分の一覧表は存在しない

化粧品成分が国による許可制だった時代は、国が化粧品成分として許可した成分とその使い方をまとめた「種別許可基準」が存在しており、これがおおむね化粧品成分の一覧表とみなすことができた。しかし、化粧品成分の自由化に伴い何を化粧品成分とするかは個々の化粧品製造販売元が自己責任のもとで自由に決めることになったため種別許可基準は廃止になった。そのため現在は化粧品成分の一覧表に該当するものは存在せず、化粧品成分の数は理屈の上では無数に存在し誰も把握できない。

化粧品の業界団体(日本化粧品工業連合会 : 粧工連)が作成している「化粧品の成分表示名称リスト」が、化粧品成分の一覧表であると考えている人もいるがこれは間違いである。粧工連は「この成分に名前を付けてほしい」という申請に対して「名前を付けているだけ」である。安全性、配合の可否についていっさい考慮せず申請があった成分に名前をつけて収載するので化粧品の成分表示名称リストには化粧品に配合禁止の成分がいくつも収載されているし、使う予定はないがとりあえず名前だけでも決めておこうという程度で申請されて収載されている成分もある。化粧品の成分表示名称リストへの収載と化粧品への配合可否が無関係だということは、別の見方をすると化粧品の成分表示名称リストに名前が載っていない成分でも法律に違反してない成分であれば化粧品に配合することは何ら問題ないことでもある。このように化粧品成分表示名称リストには配合禁止成分が掲載されていたり、化粧品に配合されていても掲載されてない成分があるため、このリストで化粧品の成分を正確に把握することはできないし、そもそもそのような目的のリストでもない。

粧工連は化粧品の成分表示名称リストの冒頭に『収載された成分の安全性、配合の可否等については一切関与致しません。』と記載しており、また2019年には加盟企業に対して『「化粧品の成分表示名称リスト」と企業責任について』という文書を発出し、本リストが化粧品成分の許可リストであることを強く否定している。しかしいまだに「表示名称が作成され化粧品原料として公式に認められました」や「表示名称が作成されてないので化粧品に使えない」などといった誤解がくすぶっている。粧工連の命名委員会で汗をかいている委員の方々には申し訳ない言い方になるが、化粧品の成分表示名称リストにはそこまでの権威や権限のようなものはないし、そのような目的で作られているリストでもない。